平成29年版の育児介護休業法(改正)
介護休業の分割取得ができる(通算93日まで3回を上限に分割可能)だとか、介護休暇の取得単位の柔軟化(半日単位での取得可能)、介護のための所定労働時間の短縮措置(介護休業とは別に、利用開始から3年間で2回以上可能)、介護のための所定外労働の制限(残業の免除)の新設など、介護のための改正について見かけることが多いです。 しかし、それだけが育児介護休業法の改正ではありません。
今回は、平成29年1月1日施行の話です。施行、ということは法律は改正されているのですが、そこから制度が実際に運用開始ですよ、ということです。
育児介護休業法となっているので、育児で休む場合と介護で休む場合と混ざっていることもあります。育児休業であっても、介護休業であっても、それを理由として解雇や降格、減給、賞与の不利益な算定などしてはいけないのです。
有期契約労働者の育児休業の取得要件緩和
期間の定めのある労働契約、すなわち、有期契約労働者の育児休業取得の要件が緩和されます。休業の取得が可能となります。
- 1年以上の雇用
- 子が1歳6ヶ月になるまでの間に契約更新がないことが明らかでない
休業を申し出た時点で、過去1年以上継続して雇用されている人で、子が1歳6ヶ月になるまでの間に雇用契約がなくなることが明らかでないことの要件を満たす場合には、育休の取得が可能になります。有期雇用の人であっても、です。
なお、介護休業のほうについての取得要件は、介護休業を申し出た時点で、過去1年以上継続して雇用されている人であって、介護休業を取得する予定の日から起算して 93 日経過する日から6か月を経過する日までに、雇用契約 がなくなることが明らかでないこと、という要件を満たす場合には介護休業の取得が可能です。
育児休業の対象となる子の範囲拡大
育児休業等の対象となる子の範囲が広がるということですが、育休のみならず、子の看護休暇、残業の免除、時間外労働の制限、 深夜業の制限、所定労働時間の短縮措置も含んだ話になります。
今までは法律上の親子関係(実子、養子ともに)がある子となっていましたが、特別養子縁組の監護期間中の子、養子縁組里親に委託されている子も新たに対象となりました。
これは、かなり細かい話になりますが、「当該労働者を養子縁組里親として委託することが適当と認められるにもかかわらず、実親等が反対したことにより、当該労働者を養育里親として委託された子」も含まれるということです。
マタハラ(パタハラ)防止装置の義務化
事業主による妊娠や出産そして育児休業さらには介護休業等を理由とする不利益取扱いは禁止であることは、前からもそうでしたが、それに加えて、上司や同僚からの妊娠や出産、育児休業、介護休業等を理由とする嫌がらせ(いわゆるマタハラ・パタハラなど)を防止措置を講じなければならないことが事業主へ新たに義務付けられました。派遣労働者の派遣先も、これら、不利益取扱いの禁止、嫌がらせなど(マタハラ、パタハラ)の防止措置を講じないとされました。
事業主が不利益取扱いをすることはもちろん禁止ですが、上司や同僚が嫌がらせをすることのないよう就業環境を害する行為を行わせないようにする、という防止措置も義務化されたわけです。マタハラ、パタハラをしてはいけないと周知、啓発するとか、相談体制を整えるなどがあるかと思います。
これから妊娠出産される方にも知ってもらいたいーマタハラ防止措置
ハラスメント、それもマタハラ防止措置の新設についても書いておこうと思います。
平成28年8月2日に、マタハラ防止措置に関する指針が公布されています。「事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針等」ということです。
事業主は、この指針に従って、マタハラ防止措置を講じておかないといけません。
雇用における男女の均等な機会と待遇の確保のために |厚生労働省
これは今までの「事業主による」妊娠、出産、育児休業、介護休業に関する不利益取り扱いをしてはならないということだけでなく、「上司・同僚」からの職場における妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメントを防止する措置が事業主に義務化されます。
簡単にいえば、上司や同僚であってもマタハラしてはいけないよ、事業主はそれを防止する措置をつくっておきなさいよ、ということです。
しかし、事業主も、いきなりそのようなハラスメント防止措置を講じておきなさいと言われても、会社としてどうしてよいかわかりませんよね。
ということで、
平成28年9月1日から平成28年12月31日までの期間、「全国マタハラ未然防止対策キャラバン」と銘打ち、全国の都道府県労働局において事業主等を対象とした説明会を実施するほか、労働者や企業の担当者からの相談に対応する「ハラスメント対応特別相談窓口」を開設します。
マタハラ未然防止対策キャラバンという、説明会があるそうです。
それと、労働者や企業担当者の相談に対応する「ハラスメント対応特別相談窓口」も、あるそうです。厚労省のページを見たら、全国の都道府県労働局に相談窓口を開設するそうです。
妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメントについての相談を中心に受け付けます。
あなたのプライバシーは守られます。匿名で相談することも可能です。相談はすべて無料です。
詳しくは、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)へお問い合わせください。
※ 時間をかけて、丁寧にご相談に対応しています。できるだけお早めにご相談ください。
これはいいですね。困っている人がいましたら、早めに相談ですよ。匿名相談も可能ですし、このような行政がやっているものですから、「無料」となっています。
まずは、勤務先、お住いの労働局、雇用環境・均等部、均等室へ相談を。
子の看護休暇の半日取得を可能に
子の看護休暇の取得単位の柔軟化として、半日単位、すなわち、所定労働時間の2分の1でも、看護休暇が取得できるようになりました。
子の看護休暇とは、小学校に入るまでの子を養育する労働者(日々雇用される方を除く)は、1年に5 日(子が2人以上の場合は 10 日)まで、病気、けがをした子の看護のための休暇(子に予防接種、健康診断を受けさせるための休暇も含む)の取得が可能です。その休暇が半日単位でも可能になりました。
介護でも半日取得を可能に
同じく、介護休暇の取得単位も柔軟化されました。半日単位、所定労働時間の2分の1単位での取得が可能となりました。
介護休暇とは、要介護状態にある対象家族の介護を行う労働者(日々雇用される方を除く)は、 1年に5日(対象家族が2人以上の場合は 10 日)まで、介護その他の世話を行うための休暇の取得が可能です。
「2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」が要介護状態にある、ということです。数日だけのような短期間だけ常時介護、というのは外れます。
介護休業の分割取得を可能に
対象家族1人につき通算 93 日まで、3回を限度として、 介護休業を分割して取得することが可能になりました。
「介護を必要とする対象家族」についてですが、対象家族の範囲は配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母さらに、祖父母、兄弟姉妹、孫です(改正前は、祖父母、兄弟姉妹、孫については、同居・扶養という要件がありましたが、その要件は外れました)。
介護のための所定外労働免除制度の創設
対象家族1人につき、介護の必要がなくなるまで、所定外労働を制限、すなわち、残業を免除する制度が新設されました。
所定労働時間の短縮措置等
今までは介護休業と通算して93日以内の範囲となっていたのですが、介護休業とは別に、介護のために労働時間の短縮やフレックスタイム制など介護休業利用開始から3年の間で2回以上の利用が可能となります。
介護のための所定労働時間の短縮措置等とは、対象家族1人につき、要介護状態にある対象家族の介護をする労働者が3年間に2回以上利用できるような措置(以下に掲げる措置)を選択して講じなければならないと、されました。これらは、介護休業とは、別に利用できるもの、となっています。
- 所定労働時間の短縮措置
- フレックスタイム制度
- 始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ
- 労働者が利用する介護サービス費用の助成その他これに準じる制度
1月からの育児介護休業法については、厚生労働省のページでも確認しておいてください。
【平成29年1月1日施行対応】育児・介護休業法のあらまし|厚生労働省