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平成30年度の年金額は今年度と同じという理由と在職老齢年金の改定など

平成30年度の年金額は、据え置き(平成29年度と同じ)

 平成 30 年度の月額としての 国民年金は満額もらう人は、月額64,941 円となりました。

 

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同じく、厚生労働省の発表したモデル世帯(妻が専業主婦のケース)で、夫婦2人分の老齢基礎年金を含む「標準的な年金額」は 221,277 円です。

 

厚生労働省のページ

平成30年度の年金額改定について |厚生労働省

 

何がモデルなのか、何が標準的なのかは、厚生労働省に聞いていただくとして、年金額の決め方です。

 

 総務省が「平成 29 年平均の全国消費者物価指数」(生鮮食品を含む総合指数)が公表してから、年金額が発表されます。毎年、物価指数が出てきてから、年金額発表となるのです。なぜなら、物価変動率が計算に必要だからです。

 

この物価変動率を見て、法律に基づいて、平成 30 年度の年金額が平成 29 年度と同じとなったのです。

 

年金額は好き勝手に決めているわけではありません。物価や現役世代の賃金を見て、毎年決定されてます。法律に基づいて、です。

 

今年は、物価が上がり、賃金が下がったということで、据え置きとなりました。

 

今回はマクロ経済スライドも発動されていません。マクロ経済スライドとは、ごくごく簡単にいえば、年金額を抑える仕組みです。

 

ただ、本来抑えられる年金分を翌年度以降にまとめて抑制するという新規定にそって、今回は、マイナス0.3%が持ち越しとなりました。

 

「新規裁定年金・既裁定年金ともにスライドなしとされます」の条文を国民年金法でみる

 

これより以下は、誰得?という話になりますまして、誰もブログを読まないでしょうが、自分の記憶のために(笑)書いておきます。

 

物価もあがり、賃金も上がった場合は、年金額の上がりを抑えるのがマクロ経済スライドの仕組みです。

 

物価も下がり、賃金も下がれば、その下落した分だけ減額ということで、マクロ経済スライドは発動しないのです。「法律上」決められているからです。

 

ただし、平成30年度から抑制することを見送りした場合は、翌年度以降で、賃金、物価が上がった時にまとめてその時の分を抑える決まりになりました。

 

これもこれで、本来は年金が増える!と思ったのに、増加分を抑えることになるのですから、どうでしょうね。物価が上がったから年金もあがると思ったのに、、、ということにならないかなと。

 

先程の厚生労働省のページには、PDFがダウンロードできるようになっています。

 

 http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12502000-Nenkinkyoku-Nenkinka/0000192296.pdf

 

このPDFにもこのように書いてあります。 

年金額の改定については、法律上、賃金水準の変動がマイナスで物価水準の変動がプラスとなる場合には、年金を受給し始める際の年金額(新規裁定年金)、 受給中の年金額(既裁定年金)ともにスライドなしとすることが規定されてい ます。

今回は、賃金がマイナス、物価がプラスです。ということで、規定に従い、スライドなしです。

 

それを数字に落とし込んだのが、以下の文章です。

 

平成 30 年度の年金額は、年金額改定に用いる名目手取り賃金変動率がマイ ナス(▲0.4%)で物価変動率がプラス(0.5%)となることから、新規裁定年金・既裁定年金ともにスライドなしとされます(マクロ経済スライドによる調整は行われず、未調整分は繰り越されることになります)

 

ここのPDFには、「平成30年度の参考指標」として、

「物価変動率0.5%

名目手取り賃金変動率マイナス0.4%

マクロ経済スライドによるスライド調整率はマイナス0.3%」

として書かれています。

 

さらに、名目手取り賃金変動率についての説明もあります。

「前年の物価変動率に2年度前から4年度前までの3年度平均の実質賃金変動率と可処分所得割合変化率(▲0.2%)を乗じたもの」であるということです。

 

前年の物価変動率、すなわち平成29年の年平均0.5%に、実質賃金変動率(2年度前から4年度前)すなわち平成26年度から平成28年度までの3年度平均のマイナス0.7%に、可処分所得割合変化率(これは平成27年度)マイナス0.2%を乗じたものです。

 

これを計算すると、たしかにマイナス0.4%です。

 

物価変動率は総務省発表でわかりましたし、名目手取り賃金変動率もこの計算からわかりました。

 

先程のPDFには、マクロ経済スライドのことが丁寧に書いてあります。

私の簡単すぎる説明よりも、これを読めばいいです。

 

「マクロ経済スライド」とは、公的年金被保険者の減少と平均余命の伸びに基づいて、スライド調整率が設定され、その分を賃金・物価の変動がプラスとなる場合に改定率から控除するものです。

 

したがって、平成30年度の年金額改定においては、マクロ経済スライドによる調整は行われません。

 

この仕組みは平成16年の年金制度改正において導入されたもので、マクロ経済スライドによる調整を計画的に実施することは、将来世代の年金の給付水準を確保することにつながります

賃金マイナス、物価プラスの変動なので、マクロ経済スライドは発動されないと、書いてあります。

 

このように将来世代のために、年金は抑えていく仕組みになっています。年金ガーという人が多いのですが、このような仕組みもあるのです。社会保険とひとくくりにされますが、健康保険とか、介護保険とは違い、「将来世代の年金の給付水準を確保すること」で抑える仕組みあり、です。

 

で、今回は本来あるべきマクロ経済スライドのスライド調整率についても書いてあります。なぜ、マイナス0.3%なのか?

 

これがその式となります。

 

マクロ経済スライドによるスライド調整率(▲0.3%)
= 公的年金被保険者数の変動率(平成 26~28 年度の平均が0.0%)× 平均余命の伸び率(定率▲0.3%)
 

マクロ経済スライドによるスライド調整率は、公的年金被保険者の変動率に平均余命の伸び率をかけたものになります。

 

では、マクロ経済スライドが発動されないわけは、法律上規定されているから、とのことですが、その根拠条文は、どれか、です。

 

その前に、今回発表の復習です。数字で表すと、物価変動率は、1.005です。名目手取り賃金変動率は、0.996です。1以上なのか、1以下なのか。マイナスか、プラスかを見ておきます。

 

国民年金法で調整期間中の改定率の改定について規定している条文は

(調整期間における改定率の改定の特例)第二七条の四と第二十七条の五 です。

 

第27条の4が、マクロ経済スライド調整期間の新規裁定者の改定率の改定で、第27条の5:マクロ経済スライド調整期間の既裁定者の改定率の改定になっています。

 

 

第二七条の四

2 次の各号に掲げる場合の調整期間における改定率の改定については、前項の規定にかかわらず、当該各号に定める率を基準とする。

一 名目手取り賃金変動率が一以上となり、かつ、前項第一号に掲げる率に同項第二号に掲げる率を乗じて得た率(以下「調整率」という。)が一を上回るとき 

名目手取り賃金変動率

二 名目手取り賃金変動率が一を下回り、かつ、物価変動率が名目手取り賃金変動率以下となるとき 

名目手取り賃金変動率

三 名目手取り賃金変動率が一を下回り、かつ、物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回るとき(次号に掲げる場合を除く。) 

物価変動率

四 名目手取り賃金変動率が一を下回り、かつ、物価変動率が一を上回るとき 

 

 

「次号に掲げる場合を除く」 と書かれているので、一(いち)です。

前年の改定率に1を掛けても同じ数字ですから、改定されない、すなわち、「マクロ経済スライドによる調整は行われません」ということです。

 

では、次です。

「新規裁定年金・既裁定年金ともにスライドなし」のうちの、既裁定年金です。

 

第二十七条の五 

調整期間における基準年度以後改定率の改定については、前条の規定にかかわらず、物価変動率に調整率を乗じて得た率を基準とする。ただし、当該基準による改定により当該年度の基準年度以後改定率が当該年度の前年度の改定率を下回ることとなるときは、一を基準とする。

2 次の各号に掲げる場合の調整期間における基準年度以後改定率の改定については、前項の規定にかかわらず、当該各号に定める率を基準とする。

一 物価変動率が一を下回るとき 

物価変動率

二 物価変動率が名目手取り賃金変動率以下となり、かつ、調整率が一を上回るとき(前号に掲げる場合を除く。) 

物価変動率

三 物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回り、名目手取り賃金変動率が一以上となり、かつ、調整率が一を上回るとき 

名目手取り賃金変動率

四 物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回り、名目手取り賃金変動率が一以上となり、かつ、調整率が一以下となるとき 

名目手取り賃金変動率に調整率を乗じて得た率(当該率が一を下回るときは、一)

五 物価変動率が一を上回り、かつ、名目手取り賃金変動率が一を下回るとき 

 

これにより一(いち)とわかります。

 

先程見たように、物価変動率が1を上回る(プラスということ)かつ、名目手取り賃金変動率が1を下回る(マイナスということ)時は、1ですから、数字に1を掛けても同じ数字になります。

 

ということで、同じ数字になりますから、こちらも PDFに書いてあったとおり、「新規裁定年金・既裁定年金ともにスライドなし」です。

 

と、長文を書きましたが、ようは、法律に書いてあるから、です。

 

1×1は1ですし、2×1は2のように、1を掛けるということは、同じ数字になるから、スライドなしということです。

 

ということで、数字を当てはめてみると、今年の年金額は、そうですね、としか言えませんね。

 

それにしても名目手取り賃金変動率だとか、一体誰がこのように計算するのだ、と考えたのでしょうか?これ以上は、調べませんが、興味があってやる気ある人は調べてみてください。

 

自分自身の記憶用ブログで、誰得という文をここまで書いたら、集中力がなくなったので、PDFに書いてあった、在職老齢年金については、サラッと書きます。

 

平成30年度の在職老齢年金について

先程の厚生労働省のPDFにも、「平成 30 年度の在職老齢年金の支給停止調整開始額等については、平成 29 年度から変更ありません」と書いてあります。

 

結論としては、平成29年度と同じです。

 

在職老齢年金の支給停止の仕組みについては、日本年金機構のパンフレットがわかりやすいです。

https://www.nenkin.go.jp/pamphlet/kyufu.files/0000000011_0000027898.pdf

 

60 歳台前半の在職老齢年金は、厚生年金保険法附則第 11 条に規定されています。

60 歳台後半と 70 歳以降の在職老齢年金については、厚生年金保険法第 46 条に規定されています。

 

ということで、60歳から65歳未満までと、65歳以上で計算が変わります。

 

平成 29 年度と変わらず、ですから、平成 30 年度は、

60 歳台前半(60 歳~64 歳)の 支給停止調整開始額 28 万円 

60 歳台前半(60 歳~64 歳)の 支給停止調整変更額 46 万円 

60 歳台後半(65 歳~69 歳)と 70 歳以降の支給停止調整額 46 万円 

 

これで、終わりなのですが、いちおう、式で考えます。

 

例をあげたほうがわかりやすいです。

 

60代前半の人の場合 

年金額216万円、標準報酬月額22万円、標準賞与額96万円の場合、

年金額を12で割って、月あたりの金額を出します。これが基本月額です。

 216万円÷12=18万円

標準賞与額(ほぼ自分の賞与)が96万円ですからこれも12で割ります。8万円です。

月あたりの金額は標準報酬月額(ほぼ自分の月給)が22万円ですから、会社から月あたり30万円もらていることになります。これが総報酬月額相当額です。


基本月額が28万円以下で、総報酬月額相当額が46万円以下ですので、支給停止額
=(総報酬月額相当額+基本月額-28万円)×1/2×12


支給停止額を計算すると、30万円+18万円-28万円)×1/2×12=120万円なので、月額としては10万円となります。

これが年金の支給停止額です。年金がこれだけもらえないということです。

 

先程、年金は月額18万円と出ていましたので、18万円-10万円=8万円

年金は月額8万円になります。実際にもらえるのは、8万円、ということです。

 

上記の式で、28万円と出ていた数字が今回発表の数字です。


60台後半と70歳以降は計算が違います。

 

年金額が192万円で、標準報酬月額32万円、標準賞与額120万円の場合。

同じく12で割って、月あたりの年金額をみます。192万円÷12=16万円です。

これが基本月額です。

 

標準賞与額が120万円ですから、これも12で割って、月あたりの金額をみます。

月10万円ですね。標準報酬月額が32万円ですから、会社から合計42万円、これが総報酬月額相当額です。これを毎月もらっていることになります。

 

月あたりの年金額16万円と会社からの42万円を足しますと、46万円を越えます(46万円を越えない人は、年金額は支給停止なし、全額支給です)。

 

支給停止額は、総報酬月額相当額+基本月額-46万円×1/2×12で計算します。

72万円が支給停止額で、月あたり、6万円です。

 

年金額が月あたり6万円支給停止になります。計算すると、16万円ー6万円=10万円です。

 

毎月、10万円年金がもらえるということです。月あたりの年金支給額は10万円ということです。

この式で出てきた46万円という数字が今回発表になった数字です。